― 上甲板・現在 ―
[見知った少女の姿を見つけて近寄ると、こちらに気付いた彼女がいかにも不安そうに声をあげる。
内心舌打ちしそうになり、それを押し留めた]
シュテラ。大丈夫、落ち着いて。
主計長と、主計の皆は?
[努めて普段通りの声を返す。不安や恐怖は伝染するものだ。
ざわりざわりと、周りの声を落ち着かせるように。
どうして彼女は一人でここにいるのだろう。単にはぐれただけ?
手に巻かれた包帯は、いつ怪我をした?そしていつ手当てをされた?
聞きたいことはあるが、一触即発の人々の中では聞けないものばかりだ]