[背後から、足音がしているのには気付いていた。
――杖と。そして少しばかり、左足を庇うような靴音に。]
…シモン?ふふふ、宿にね、行こうと思ってるの。
だいぶ雪が深くなってきたでしょう?
今年も、一人で越すのは不安だから…
[声をかけられ>>402、くるりと振り向き微笑む。
真っ白な視界に、インクを落としたように黒い人影が滲んだ。
彼は元々兵士だったと聞いたけれど、
纏う空気にはそこまで殺伐としたものを感じない。
こちらの視力が弱いこと、耳がいいこともすぐに察してくれたのか、
余計なことを言わないでくれる優しさを持つ人でもあった。]