[玲緒と別れ、あたしは迷企羅大将から順繰りに、蟹歩きのような形でお参りを始める。
お賽銭を入れて拝んでから、神像をつぶさに観察する。
何度見ても飽きなかった。
それぞれのお賽銭箱に入れるのは赤銅ではなくて白銅色。
穴が開いている方だ。]
(五重の縁がありますように…ってね。)
[ふふ、とほくそ笑みつつ、薬師如来のところでは百円玉を入れた。
その理由は、十二神将よりも格が上だから、何となく。]
(…おじいさんが元気になりますように)
[十二神将には「強くなれますように」と下賀茂神社でしたのと同じようなお祈りをしたけれど、
ご本尊にはそんなお願い事をした。]