……苦戦、かな。
そこのお方。茨使いの素敵な殿方。
[動き回る茨に苦戦していると見たのか、傀儡は恋人を呼ぶかのような甘ったるい声でアヴェに呼びかけます。
すれば、アヴェの意識は此方――小窓から顔を覗かせる傀儡へと向き、ゆっくりと近づいてきます。
天井に打ち付けられた男の身>>419 を拘束する力も、弱まったことでしょう。
それはつまり、扉側にいる方には背中を向けているということになりまして。]
「きもちわるいですよぅ。」
言うなや。男も女も、美形に甘えられたら弱いもんなんよ。特にあんな色狂いっぽいのんは。
「なるしおつです。」
[傀儡の身を拘束せんと伸ばされる茨を、屈んで壁に背を貼り付けることでなんとか逃れまして。
目の前の床に突き刺さる一本を見れば、流石にびくりと身も震えてしまいます。]