[先に目を覚ましていたトールからその際の涙の跡を問われては
苦しい言い訳を繰り返して過ごしていた頃の話である。]
……えっ?
[不意に、頭の中に直接響くような何かが聞こえた。
音のようでもあるし、イメージとして表せるようなものでも
ある、これは一体何だろう。]
あの…今、何かが頭の中に直接響くような声が
聞こえたのですが、貴方…僕に何か細工しましたか?
聞き覚えのある声でしたので、少々気になりまして。
[まず疑ったのは眼前の主。
先の声の気配は、違いなければ再会を願った血兄弟のものだ。
自分達が短くとも語り合ったことを知っているのかどうかは
さておくとしても、余計な気を回して元気付けようという
魂胆なのだろうかと考えたのだ。]