[……ひとつ気にかかるのは、ラウツェニングとトゥーレーヌの心中譚だ。
それぞれ名家の令息、当主である彼らが相討った事――
大公の血をひくラウツェニング家に残された後嗣は、開戦派の父親の元で育ち、恐らくは薫陶を受けている、という事実。
相討ちと言えど息子を、兄を敵方に殺され、体面的にもただ引き下がりはしないだろう。
彼の従兄であるという大公もまた、わが子を殺されたラウツェニングを無碍にするわけにもゆくまい。]
(…そして『狼』が和平派に寝返ったというのなら、大臣暗殺をこの場で告白するより、もっと良い方法があった筈。)
(寧ろ開戦派――ラウツェニング家の庇護を求め、拒否された、という事だろうか)
(もしくは教え子達の正義感を、甘く見ていた、という事かな)