あたしさー、鶴翼とか魚鱗とか、兵法書に載ってる陣形って大嫌いなのよ。
何よ鶴の翼って……。
鶴の翼がどんな形しててどんな機能するのかなんて誰も知ってるわけないじゃん。
そんなの注意深く見たことあるやつなんているの?
それに魚鱗って何よ、魚の鱗でどうやって敵倒すのよ!?
だいたい内陸国のセルベシアに魚とかナメた名前持ち込むんじゃないっての、あの本書いたやつバカじゃないの!?
トラバサミならみんなわかるよね?
踏んだらガッチャン、挟んだらすんごく痛い。
センターに居るあたしがスイッチになるわ。
あんたたちが刃のほう、そっち側とそっち側に別れて……一斉にガッチャンって挟んで突き刺す、いいね?
[独学で兵法をかじった頃の一部個人的な怨恨もあったようだが、民間防衛のためには陣形ひとつとっても民間人に馴染み深くアレンジしてやるべきだというのが彼女の持論のようだ。
人一倍夢にこだわってきた彼女だからこそ、その立場の相手がイメージできるのかという点に特に気を配れるのだろう]