[>>403静かに聞いていた軍医に襟首を掴まれ、驚いたように瞠目するが、抵抗する事はない。
まくし立てるような言葉を聞いている内に瞳が揺れて。]
…っ、では、どうしろと言うのです。
残された者は、死んだ者の代わりにはなれません。
それはこの数年で嫌というほど思い知らされました。
この手で出来る事と言えば、彼らの無念を晴らすくらいだ。
[未来を作りたいという願いも変わらず残っていても、今では復讐心の後ろに隠れてしまっている。
やがて嵐のような言葉は終わり、解放される。
兄の事に触れられれば胸に痛みを感じ。]
――俺には…分かりません。
[男の知る兄は喜ばないだろうと思う。
けれど夢に出てくる兄は…。
記憶と虚構が入り混じり、もう何処までが本物か分からない兄の像が頭に浮かび、呻くようにそう答えた。]