―― 一年後の春の夜――[迎えは突然にやってきた。最低限の手荷物だけで、静かに寮を出る。月明りの元に見えた黒い馬車は、幼い記憶そのままに。不吉で――…そして、恐ろしかった。] …………また、これを見る時が来るなんて……。[呟きは、夜風に消える。身体に流れる血は、やはり消えはしないのだ。平穏な日々を手に入れたと思えば、再び、自分を縛り付ける。]