― 出立の日・鴉の巣 ―[宝玉の杖を振り拍子を取り、気に入りの交響曲の一節を口遊む。今日は城を出立し我が家に戻る日ではあるが、血子は別れの挨拶をしておきたい相手がいると言い、許しを願い出たので、許可して今は不在だ。そんな他愛ない我儘を許すのは、後で折檻する愉しみの為と、血子の心許した笑顔を見る為。自分の城に戻ったらどんなふうにアルビンを可愛がろうか……そんな夢想に唇を綻ばせた。]