[しかし、そうやって各地を転々としてきたヴィダンの民も、
ラモーラルに於いては少々事情が違う。
古きを知る同胞によれば、この地に訪れてから25年近くになるという。
領内平原を転々とはしていたが、そも、10年を超えて同じ国に腰を据えていること、それ自体がヴィダンの民としては異例なのだ。
最初の頃は、元辺境伯の統治下にあったラモーラルの気質が肌に合ったということだろう。では辺境伯が下克上によって代替わりしたその後の数年間は、どうか。
様子を見るための猶予時間はあったろうが、王国の支配下に置かれた影響で居住できる土地の減少や税の重さ、届かぬ恩恵に徐々に不満が蓄積されていたのだから、疾うに移住を始めていてもおかしくはない。
それなのに、この地に留まるものが多い上、
独立開放を望む声すら上げ始めている。]