はは……いざ目の当たりにすると、死にたくねえもんだな…。
[もうオットーの焼いたパンを食って、腕を褒める事もできない。クララに本を返すこともできない。ジムゾンさんに悪態をつきながら仕事を手伝わされることもないし、シモンさんやディーターさんと酒を呑み交わす事もない。リーザやペーターが元気に走る姿もこれから成長していく姿も。
そんな事を考えながら、木箱に上がり、ロープを首にかけた。最期に遺言を聞くと言われたので。]
そうだな…アルビンに伝えてくれ。
……パメラを宜しくな。
[いつか言われた言葉を、そのまま。そうして足が宙に浮く感覚。
こんなことにならなければ、ニコラスさんに色々話を聞けたのだろうか。村を出て行ってから少し溝を感じたアルビンと昔の様な仲に戻れただろうか。ヴァルターさんに引け目を感じないようになれただろうか。そして、パメラの笑顔を…]
(それは、半年前から無理か――)
[そこで、ヨアヒムの意識は途絶えた。]