―魔王城・中庭―
……わあ、
[墨を流したような暗黒の空に、
紅い雲の流れていく、そして、降り注ぐ雨も緋色だ。
鉄錆のような匂い、赤い水溜りに幾重もの波紋が出来て壊れていく。
はらりと、そこに落ちたのは、
骨のように白い花びら、赤黒く染まっていく。
雨音に紛れて、呻き声とか叫び声に似た――、
獣の鳴き声だと思いたいような異音が聞こえてくるし、
なにか得体の知れない轟音も響いた>>385]
か、雷かな……、
[はっきり言って、かなり不気味だ。
赤い雨降る魔王城の中庭で半透明の存在は、
心もとなく思わず辺りを見回した*]