[ヴィダンの民は、遥か昔より多くの国々を移動してきた
少数の流浪民の一団が徐々に集まって現在の形を作り上げた一族で。
旅の途中で様々な血が交ざり、その関係上、結託は強いものの、
古来よりラモーラルに居住してきた先住遊牧民たちと比べると
生活の場に対する考え方は比較的淡泊だ。
まず、さほど土地に執着をしない。
こちらが駄目なら他所への移動を考える、という
効率重視の考え方で生き延びてきた。
一方で、土地に腰を落ち着ける基準となったのは常に、『人』だった。
まず筆頭は"国主"であり、"領主"であり、
時に"その国に住む民"である。
―――『民こそが国、ゆえに土地でなく民を知れ』
―――『ヴィダンの民は国に根付かず、人に根付く』
その言葉は、どんなに世代交代が行われようと親から子へ伝えられる、一族の教えのようなものだった。]