― シュビト近郊 ―
[私兵百五十を率いる男の手勢は、シュビトの街すぐ近くで行軍を停止する]
…ふん。気勢の声が此処まで届く。
反骨精神を抱いた今の奴らは、云わば鎖を焼き切らん猛火。
火を消すだけならば、火消しの水は幾らでも用意できよう。
だが…。
[その時、空を舞う鳩が、天上から男を見出すと、真直ぐに降りてきた]
…アレイゼルからの耳。手紙は二枚あるのか。
どれ… ああ、これはガーティからの手紙か。
『近いうちに、再会を』…か。
ははっ、十分も歩けば再会できる近さである事に違いはないな。
[手紙を見て、過去、件の放蕩息子が家を出た直後の事を思い返した。貴族の家系は不仲などよくある話だ。骨肉の争いと云えばよく聞くが、オルヴァル家もそれに漏れず随分と夫婦仲、親子仲共に険悪な物だった。
従兄妹のクローディアが敢えて詳しくを話さない事そのものが、根深さを象徴していたものだ]