[たまに、アースガルドの話をすることがあった。
その時の自分の顔は実に酷いものであっただろうと、自覚している。]
あの国だけは、存在してはならない。
[憎しみの籠った声だと、誰もが言うだろう。
その存在は、巻き込んだあらゆるものと共に、歴史の中から焼き消してやろう。
そう思っているから。記録役のことは知らないから、どうあっても記録が残ってしまう可能性については考えもしなかったが。]
[ディークのその存在を、本当の意味で知ったなら。
テオドールはきっと、哀れむように嗤ったろう。
――そして、どんなに知った顔だとわかっていても。
迷いなく銃口を向けるだろう。どうか、死んでくれ。