― 小部屋 ―[バルコニーを出て、足の向くまま血の導くままにそぞろ歩く。銀色の小蛇は今は上腕に巻き付いて、時折赤い舌を伸ばしている。ふらりとした歩みが止まったのは、ひとつの扉の前。二間続きの部屋の、小部屋に続く扉。] レナード。[名を呼ぶ声は空気を震わせるほどの強さを持たない。ただ、自らの存在感だけを仄かに扉の向こうへ漂わせて]