ならず者 ディーター

─ 記録・とある星 ─

大変申し訳ありません。
本日、陛下は急に体調を崩されまして…。

［申し訳なさそうな様子など微塵もなく、どこか不遜な様子でそう仏頂面で話す男は、疲れ果てた社会人のようにも見えるだろう。
ワインレッドの格式張った軍服をきっちり第一ボタンまで閉じて、首を絞めているのか？とでも言わんばかりに神経質に上まで上げられたネクタイ。
伸ばされた背筋は僅かに大仰で、反り返ってしまっているため無理して伸ばしているような印象を受ける。

その頭の中が、怒りで煮えくり返っていることは、頭の中を覗く能力でもない限りはわかるまい。
ある意味、体調不良だと言える。持病の「今やりたいことしかやりたくない病」だ。
「ゲームしたいから体調不良って言っといて」なんてい出した時にはどうしてやろうかと思った。10年前にようやく宇宙連盟に加盟した小さな国の国王が、こんな仮病で学校を休むみたいなノリで休んでいいのか、と言われればそんなわけがない。

それでも男にとっては、国王様は”神様”なので。
胃がキリキリとして、自然に眉根に力が入ってしまうのも気が付かないふりをして「わかりました。」なんて笑って見せるのだ。］