[差し出した左手は、彼の肩を抜けた。向こう側の透けて見える身体だ、己が触れられるはずも無い。―――ただ、失いし右腕を除いては。見えない右手の感覚を追いかけ、五指を握りこむ。神なんてあまり、信じてないが、この腕は親友を信じていた。ギシ、と関節が悲鳴を上げても、右腕を大きく振りかぶった。霊体を殴るなど、奇跡か、笑い話か。彼を信じることは、奇跡でも笑い話でもなかった。振り下ろした右腕が、彼の頬へ。] 起きろ、バルティ! 勝手に満足して、何も決めないまま、俺に君を見誤らせるなっ!