ならず者 ディーター

─ 死後・祭壇前 ─

［本来ならば。首を斬ってもすぐには死ねない。
体内の血が致死量に減るまで、出血と痛みが延々と続く。

だけど、ディーターは随分と思い切って斬ったから。
寸前にアルコールを摂取していて、血行が非常に良くなっていたから。

ぶつ、と大きな流れの管をあっさり断ち切って、首筋に真っ赤な大輪の花が咲いたから。
すぐに脱力して、祭壇を拝むようにして前のめりに倒れた。

一瞬にして、首筋から流れ落ちる暖かな液体が、周囲一帯を真っ赤に染め上げる。
地面が吸いきれなかったそれが染み出して、深紅の水溜りを作った。

暫しの間、寒さと熱と痛みと。それから、死ぬんだろうな、という脱力感と一緒に、赤く滲む地面を存外、穏やかな気持ちで見つめていた。］