[私は、周囲の暗闇と同化した漆黒の獣に、朱で染まった腕を伸ばしました。伸ばした腕が届いたかは、私は既に知ることは出来ません。腕を伸ばすだけの力は既に無く、重力に負け音を立てて堕ちたのか。例え届いたとしても、それは無慈悲に振り解かれていたでしょうか。もしくは――――。目の前が、見えなくなってきました。もう、時間が無いのに。伝えたいことが、いっぱいあるのに。]