― 回想:非常事態前 花屋店前 ―
[さっと視線が逸らされたような感覚を得て、またやってしまったと反省しながら、それでも言葉を紡ぐ。
実際買いに来てくれことが嬉しいのだ。
まさか相手が、情緒を返さないうしろめたさを感じているなんて、微塵も思わずに。
それが分かったなら、私だって初めは枯らすわ腐らすわの連続だったと軽口でも叩けただろうが、それは結局伝わらないで消える。]
お買い上げ、ありがとう。
……いつだって来てくれていいのに。
[にこりと、ごくごく自然に微笑む彼女に、つられて笑う。
そうして、有耶無耶になってしまうのだ。
いや、むしろそれを望んでいるのかもしれない。
(だって、彼女は……似てるもの。)
(フローレンスに……。)
かつての親友。
同じ場所で生まれ、育ち……そして肉体強化の実験で、亡くなった。
アリーセの金髪金目の容姿、そして年齢は……かの友をどうしても想いおこさせる。
店に来てくれて嬉しい。
……でももう、失ったときの喪失感は味わいたくなかった。]