ならず者 ディーター

［──もしかしたら。魂が半分しかないから。
だから、誰でも入り込めたのかもしれない。

誰かに優しかったのは、空っぽの器には何でも入る、というだけだ。優しいから優しいのではなく、スペースに余裕があるから、優しかったのだ。

だけど、魂が半分しかないから。
誰かに砕いてあげる心の臓は、残念ながら持ち合わせちゃいないのだ。
その証拠に、聞いてくれるかい。

綺麗な双眼が、いつもより光を反射していても。
苦し気に歪められた顔に、少年の面影を見ても。

それでも、「あ、意外と好かれてたんだなあ」って感想しか出て来ないんだよ。
なんなら、ちょっと嬉しかったりしてね。
困ったことに、胸が痛まないんだよな。
こういう時って、胸の奥が痛くなって、心臓を握りしめられているような気分になるんでしょう？］