[血の気の足りぬ顔色の侭に、虚ろな眼で振り返り、>>389彼の開いた唇から覗く牙をぼんやり眺め見る。…そういえば、自分の牙は何処へ行ったんだろう?伸びたり縮んだり可笑しな仕組みだと気付いて、一人感慨深げに舌で口の中をもごもご探った]
血は要らない、未だ――…
[渇きを覚えない訳ではないと、含ませることで返答に代えて、グラスの水を一気に煽って流し込む]
……っ、ごほ、……――ぅ、……ッぐ、
[空っぽの胃が驚いて、逆流しかけたものを、口元を掌で塞いで堪えた。どうせもう吐く物は入っていないけれど、嘔吐すれば只でさえ足りぬ体力が削られるだろう。幾つか咳払いをして、呼吸を落ち着ければ、今度は、少しずつ、二杯目の水を口に含み]