── 現在・パン屋からの帰り道 ──
……なんだか、
[いつもより寒い気がする。
随分と空けてしまった牧場へ、帰路の途中
空を見上げて独り言が落ちた。
パン屋の前で暫く待ち、オットーは帰ってきただろうか。
会えたのなら幾つか言葉を交わしてから、兄の好きなパンを二つ受け取って。
そうでなければ、ほんの少し気落ちしつつ両手は空のまま。
曇り空を目にふと過ぎったのはこの村に伝わる話。
確か百年前には──
首を横に振り、思考を止める。
こんなことを考えていたら兄に笑われてしまうだろう。
人狼なんていない、彼の口癖のような言葉を唇の動きがなぞった。]*