[そして、にこりと笑って、「逃げるなら裏口があるわよ、足を痛めるから、靴も履いて行きなさい?」と告げる。引き留めはしない、それが逆に、彼女の心の責になるのは嫌だったから。代わりに一言だけ、言った。] いつでも来て、いいからね?[彼女がどういう反応をしたのだったっけ。去ってゆく背中を見ながら、結局のところ何も出来ない自分が歯がゆくて、困ったように頬を掻いた。そんな記憶。*]