― 回想:生家 ―
[それはまだ、彼女が何のしがらみも知らぬ頃。]
可愛いエリーザベト。
ええ、必ず。できれば今度は、私の弟も一緒に。
[>>316年に数度中央に戻る折、必ず顔を出した本家。
病弱な弟とは、頻繁に遊べるワケでもなく。その分まで大人しく構われてくれた年下の又従妹はいつも、その姿が点になるまで手を振り見送り続けてくれていた。
父は、本家に来る折余分な事を話そうとはしなかった。
だから。騎竜師の才だとか彼女の境遇だとかは、何も知らぬまま。母の死以降塞ぎがちになった間に、気付いた時には既に、彼女は天に召されていて。
もし、時計の針が戻せたなら。せめて今度は、あの子の見送りを。何度、そう思った事だろう。
――――……よもや敵軍に、など。今はまだ、思いもよらぬ事で*]