[――…いつも、伸ばされていた手が、あったように思う。
あの海賊船で、自分を拾ってくれて、船においてくれたマーティン。
馬鹿なことや悪戯をしでかしてばかりの子供に構ってくれた、船の大人たち。
同じように拾われては、船で同じ時間をすごしていた、似た年頃の子供たち。
それから――… “ ”
病弱で、いつもどこか辛そうな影があったようにも思えて、
それなのに、
あのさ、いつも、他の誰かのこと心配して想いを寄せて、そんな風にしてるように、見えてたよ。
きっと、気づかないでいただろうね。
胸の空洞に作り物の心臓を貰ったばかりのブリキの木こりが、
心を動かすやり方を、学んでいたあの船で、
皆に優しさを向けるその姿から、どれだけのものを、貰っていたか。
“あなたは、殺されかけなくてよかった”と、あのときそう言っていた。>>0:363
きっとあの船に来る前も、
あの船を降りてから、たくさんのことがあったのだと思う。
知ることも出来ずにいる、それが。
どうしようもなく、胸を刺す。
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