― 廊下 ―[廊下の向こうでしっかりと抱き合っているのは、あれは、男女のように見えた。自分とて草木でも朴念仁でもないから男と女が抱き合っているのを無駄に嫌悪することもないし邪魔しようという気も起きない。静かに立ち去ろうとして踵を返しかけ、なにかに気づいて慌てて振り返る。その拍子、飾られていた彫刻に手が当たって落ち、盛大な音を立てた。]