ちょっと、まって!!
[慌ててそう言って引き留めて、ちょうどポケットに入れていた生花用の切狭で、目当ての花をパチンと切る。
それは鈴蘭。
根や葉に毒性がある可愛らしいが危険な花であるが、今手折った花は、品種改良によってその毒性を取り払った種である。
下を向いた小さな白い花から、ふわりと香る甘い香り。
葉の緑色が鮮やかで、白と緑のコントラスト美しい、上品な花だ。]
これ、あげるわ。
……この子は鈴蘭。
毒とかないから安心して?
長い冬を耐えて、暖かい春が来た頃に
花を咲かせる花なの。
……それにね、
「幸せの再来」って意味もあるのよ。
[心なしか早口でそう言って、その花を、切りっぱなし、むき出しのままでその手に握らせる。
その空色の目が曇るのは嫌だった。
だから伝える、花で、花の持つ言葉で。
生きていくことを、生きていることを、諦めないで欲しいと、そう願って。]