――軍医殿。
自分は昨晩、カシムより敵国の密偵のものと思われる密書を発見したとの報告を受けていました。
[実際には部下を通じてだったのだが、そこは割愛する。]
そして今朝の爆発です。
自分は上司に本国の避難命令に従うより先に、その密偵を探すべきだと進言しましたが、受け入れては貰えませんでした。
そこで俺は科から離れて調査を行おうとしていたのです。
密偵が艦内にいるならば、最新鋭の技術の詰まったこの艦を手に入れようとするだろうと思ったので。
――その最中にカシムが死にました。
[カシムの死に顔を思い、両拳を握り固めた。
若い命が散らされてしまった事を、決して許してはならない。
途中から一人称が変わっている事にも気付かずに。]