…………あら、あんたかい。
ひさしぶりなんてもんじゃないじゃないか。
まあ、旅するあんたと村の中とじゃ、時間の流れも違うのかもしれないねえ。
[奥で扇をヒラヒラさせつつ煙管を燻らせていたところだった。
何年ぶりかとはいえ旧知の間柄では、砕けたその姿勢を崩す必要は感じない。
そのまま応対していた。
旅人などというものはなべてそうかもしれないが、このニコラスという人物も何か曰くありげであろうことが、そのたたずまいからも察して取れる。
直接本人に問いただす野暮はしない。
旅こそしないが、抱えるものがあるのはお互い様だ。]
(いわく……わけあり………なんだろうねえ、今日という日は。
何がそんなにひっかかるんだろうねえ)
[女の勘、女主人の勘……なんだか知らないが、こういう違和感があるのはよくない予兆だ]
(村のいわく…………まさか、ねえ。)