― 魔王の城 ―
[魔界、と呼ばれる世界のひとつであるここを治めるのは、一柱の王だった。
魔王スヴァルニール。
人の上半身と獅子の体を持ち、鷲の翼を備えた異容。
肌は鞣した革のように強靭で、毛並みは夜を煮詰めた黒色。
上半身を包む衣は黒と金で仕立てられ、炎を封じた石や鮮血を押し固めた玉など様々な宝玉で彩られている。
背に纏う赤いマントには亡者の顔が絶えず蠢き現れ、怨嗟と悲嘆の声を上げていた。
悪徳を良しとし、破壊と殺戮を厭わず、弱者が踏みにじられるのを見て嗤う、魔界の王の名に違わぬ性質を備えていたが、なによりもこの魔王は余興を好んだ。
人と魔とそれ以外のものとを問わず、この魔王の余興に巻き込まれたものは数も知れない。]