ハンスは私を守ってくれて、反撃に出る余裕が生まれた頃――神の尖兵は突然動きを止め、壊れたからくり人形のようにそのまま本当に動かなくなった。
垂れ下がっていた白銀さまが慣性でぷらぷら揺れているだけ、というのが少し怖かった。
『なぜ?』
そんな声が聞こえた。
それは、相手の意思――。
戦いが終わってから思う――私は、ひどい思い違いをしていたのかもしれない。
この神が、取引できない相手だという決定的材料は本当にあったのだろうか。
これは敵、すなわち本当に本当に売買が成立し得ない相手だとどうして言い切ったのだろうか。
神が遺した言葉は、需要。
それに応えるのが、供給。
ふたつが交じり合うのが、商取引。
私は、相手が何を欲しがっているのか、というリサーチを怠っていたのではないか。
大旦那様や若旦那様が私をこの世界に送ったのは、そういう心構えのようなものを培わせるためのものなのかもしれない。
あの壁に描かれていた商会のシンボルマークは、どんな場所でも商会員が訪れれば商会の商業圏だという意味だったのかもしれない。
――私は、商売人としてまだまだ未熟なのだと思い知らされた。