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縋るのではない、望みを託すのではない、
暖かさを、求めるためではない。
ただ、その手を取って、痛みも苦しみも喜びも――…
己が地獄のそれではないがゆえに、
きっと、本当の意味では理解なんてできないそれを、
ほんの少しでも良いから、想い暖めることができたならと。
あるいは、もしたとえばその手がひとり耐え、
自身の爪で、自身の心を裂くような、
そんな痛みと苦しみの底にいるときは、
出来るなら、この手を握りしめていてほしいと、
――… そう望む、そんな手だ。
この手は、どうしようもなく血に汚れて、愚かで、
切り裂かれても引き裂かれても砕かれても足りようが無いくらいに、
人殺ししかできない、がらくたで、
あたたかくなんか、きっとないけれど、それでも、いいかな、
頑丈なことだけは、保証付きだから。
手を伸ばしても、いいだろうか。]