[自身の置かれた立場を理解するや、
子狐は愛する父に我儘を一つ。
出来ればこの城の外、何処かで密やかに暮らしたいと。
吸血鬼世界の派閥など、愚かな自分が解することは難しい。
ただ、己が公に存在することで、
何かの不都合が生じることは避けたかった。
それに何処へ居ようとも、紛れもなく僕は貴方のモノ。
独り立ちを果たせたら、
自身の力で歩めるようになったならば、
その時は改めて貴方を公然と父と慕わせて下さいませ――]
……御父様、この日を待ち望んでおりました。
けれど本の少し、寂しくもあるのです。
[謳うような独り言は、静謐に落ちる*]