旅人 ニコラス

この村にいる人狼は、一歩外に出れば世の中の人にとって、何をしでかすか分からない、自分よりも強大な力を持って絶対に抵抗できない脅威でしかない。

例えクララさんが許しても、彼らは再び糾弾される。ええ、絶対に。それだけ被食者《にんげん》の捕食者《じんろう》に対する本能的恐怖は大きいからです。

何故なら既に一度、この村の人狼は【人狼騒動】を起こしてしまった。どんな理由があれ、仲間《リーザ》がゲルトを殺すことを止めなかった時点で同罪です。超えてはならない一線を越えた以上、今後再び事件を起こさないなんて、僕には思えません。

[きっと自分よりも彼らをよく知るジムゾンが、この言葉をどう捉えるかは未知数だ。
だけどこれはジムゾンへの呼びかけというよりは、己の決意表明であった。

死んでも続く、修羅への道。お前たちが死をもってゲルトを犠牲にした己の罪を償う日をあの世で待っていてやる、という奴だ。
その思いを笑顔に込めてジムゾンへ頭をさげたあと、改めてその場を立ち去った。**]