― アレイゼル領・宿『ポンドフィールド』付近 ―
[その頃宿の外では、既に剣を刷いた私兵や警邏が周囲を探りだしていた。
領民ではない。然し旅人や商人にしては挙動の怪しい人物。
この付近に存在するのではないか]
『そこの宿場を改めろ!』
『酒場はどうだ! なに、昼に酒びたる酔っ払いだけ?
ああもう、そんな奴は放っとけ!』
[事実、アタリを付けた宿屋が改められていた。
但しそれは、サシャが臥していた宿屋からは数件先の場所。
然しそう遠くない内に宿を改められるのは違いないだろう。
現在、宿に近した路地を見張るのは精々十名前後。
直接宿に踏み入る者も、三名四名という程度。
掻い潜ろうと思えば掻い潜れなくもないかも知れない。そんな按配の人数だ]