―― 王宮・外回廊 ――[夕暮れの涼しい風に髪がそよぐ。一仕事を終えての帰り際、僕はふと、ただぼうっと外を眺めていた。[目線の先は王宮より遥か北。巌しい山河に囲まれ、語るべき物といえば堅牢な要塞くらいの。僕の生まれ故郷は、そんな地方にある小さな寒村だった。と言っても、そこで過ごしたのは生を受けてから僅か十年あまり。故にさしたる思い入れなどは無く、むしろ――……。]