― 黄砂の村 ―
[揺らいだ空気が再び風景を結べば、
そこは、最初にいた小さな村だった。
クレーデルの足が選んだのならば、安全なところだろう。
村ならばなにか治療に使えるものもあるかと進み出したところで、
奥からの話し声に気が付く。]
おーい、誰かいるのか?
……っ、ぃててて。
[さして用心もせずに声をあげてそちらへ馬を向ける。
声を上げた拍子に肩の傷が痛んで、情けない声が出た。
左足の傷はともかく、肩の傷はいい具合に深手である。
右腕血まみれ、血濡れのハルバードもち、となれば
気の弱い人にはちと心臓に悪いかもしれない。]