[眠れないと思っていたけれど、とろとろとまどろんでいたらしい]
[吸血鬼を「我が主」と呼べという、悪魔の中の悪魔のごとき命令を聞いた時は、耳から狂い死ぬかと思った。
拒否した。拒絶した。
どんな事をされてもそれだけは呼べないと泣き叫んだのに……]
[無駄だった。無力だった]
[どこまで耐えられただろう。何年、彼を楽しませたろう。
最後の最後に口にした。
魔物ごときを「我が主」と呼んだ。
……けれど、雷がこの身を貫く事もなければ、地が割れて地獄に落とされることもなかった。
アルビンの心が本当に折れたのは、
その一語を発した時ではなく、それを知った時だったかもしれない]