…おいしい…。[口にした果物は冷やされていたのか、ひんやりとして薫り高い。噛むとみずみずしい甘さが口の中に広がって、自然と表情が緩んでしまう。あまり馴染みのない味だったから、何の果実かと尋ねたら、南国で採れるものなのだそうだ。この国の南方は国境の小競り合いがあるらしく、平和な国土であっても多少は荒れていると聞いている。>>354それでも、こうした物資は、国から出ずとも手に入るのだ。これこそまさに豊かさの象徴で、憧れてやまない市井の幸せ、というものなのだろう]