[東側から射す、鮮やかな朝焼け。
濃紺が紫のいろへ染め上げられる、ほんの一瞬の、奇跡。
荒い息をついて岩場に縋りながら、一歩一歩、進む。]
(……、フィ、)
(どうしている? 捕まったり…、していないだろうか…)
(俺の言うとおり、別の国へ、…逃げていて、くれれば…)
[彼が、己を庇ったとの疑いで投獄された事は無論知らなかった。
……やがてその彼を、リエヴル・ド・トゥーレーヌが釈放してくれることも。
ただ漠然とした不安に塗り潰されそうになりながら脳裏に浮かべ。
――切り裂くような痛みに、唇を食い締める。]