[痛む左肩を庇いながら、崖を降りるのには、一晩がかかった。
頭絡を外してベルト代わりに締める。
手綱や引き綱、乗馬鞭など、使えそうなものをありったけ外して、両端を堅く結びつけた。
ベルトに固定し、解けないように強度を確認する。
手綱の片側は鐙の輪にもやい結びにした。手持ちのナイフで、頑丈そうな岩の間に固定する。]
……。――
[荒い波の音と、濃紺の闇。
思考は停止して、ただ、機械的に手だけが動く。
見下ろせば水面には、張り付くように岩場が広がっている。
三階建て程度の高さはあるだろうか。
長さが足りるかどうかはわからない。
だが、降りてみるしかなさそうだった。]