[幾重に重なる衣は彼女の白皙を隠し、
歩を進めるたびに揺れて、ひらりひらりと舞い遊ぶ。
彼女の杞憂を感じつつも、
大人しく腕の中に納まる彼女へ、笑気一つ。>>368]
“なんだって”…それは、それは。
―――…私の妻は献身的で、実に助かります。
ああ、貴女の力を浪費する気はありません。
唯少し、―――目印に使うだけですよ。
[鸚鵡返しに彼女の承諾を繰り返し、告げる礼は朗らか。
言葉の意味を教えるのは、最初の曲がり角に辿り着いた後。
二手に別れる行き先は、どちらも先が見えない。
僅かに冷えた空気は流路も知れず、逡巡刹那。
徐に彼女に視線を寄越すと、緩やかに手を差し伸べた。]