……。……[のろのろと、真下を見る。岩にひどくぶつけたらしい左肩とは裏腹に、己が腰を下ろしている箇所は、ひどくやわらかい。――おずおずと、其れを撫でる。既にその毛並みは、冷たくなっている。こみ上げる何かを堪えるように、掌は震えていた。たわめられた心を晴らすために。全てを振り切り、前に、進むために。その背に己を乗せて疾駆してくれた彼は、もう居ない。]