[弟が居ぬ間に人形の手入れに励むかと、白い棚から華やいだ笑みの人形を手にとり、髪に櫛を通してやる。作るのなら笑顔の人形が良い、特にふわふわと優しく温かい空気をもつなら非売品で手元で飾っておきたいくらいだ。逆の方向性の世を疎んで憂いを帯びた人形も捨てがたい。それとも。今まで作ったことがない、美しさよりも突き抜けた芯を求めて、自分の可能性を広げるための挑戦をしてみてもいい。楽しげに微笑し、作業を片手間に次の創作へ思いを馳せる。恐ろしい噂も彼の芸術活動に影響を与えない様子**]