[――三々五々散ってゆく部下を見渡し、ひとりの兵士に目を留める。
部隊内の死者を清めてまわっていたその兵に声をかけ]
……遺髪は集めたな?
――わかった。俺が預かり、天幕へと安置する。
草原へと、還せる様に。
[草原の大陸の者は、草原へと、魂が還る。
魂は白い隼となり、永遠に続く緑の海原を飛翔する。
その古い伝承を信じている者が、部隊内にも多く存在した。
手を差し伸べ、遺髪を包んだ布を受け取る。
己もいつこの中に加わるかは分からないが、と、内心で苦笑した。
しかし、部隊の誰かひとりでも生き残れば、この包みは草原へと運ばれ、その風の中に散らされることだろう]