いざとなったら逃げるぞ。全速でだ。
まともに打ち合ったら勝てんぞ。相手は専門家だ。
[遊牧民を主とした手勢に、男はこう語った。本音だ。
戦闘を生業とする者らに、いかに士気高しとはいえ素人が打ちかかって勝てるものではない。
3人がかりというのも苦肉の策、それでもこの砦も最後まで守りきれるとは思っていない。
ゆえに、このような指示を全軍に与えていた。
地理に明るい者らを揃えた>>0:290のも、その為だ。
いざとなれば逃げる。それも散り散りにだ。
正規軍の如き整然とした撤退にはならないであろう。
けれど、それでいい。
この砦を突破された後に倍する敵を止めることがかなうものとは思えず、ならば託された500の民兵、これを少しでも多く生き長らえさせ主の元に返すこともまた、男に託された使命であるはずだった。]