−ホートン砦−
[その冷え切った眼は何も映さない。
自分は人ではないらしい。
それは生物学的な意味ではなく、精神的な面での話であるが。
魔物ですら男には畏怖を覚え、遠巻きに見つめる。まぁ対してそれを気に止めもしないのだけれど。]
テオテオー、いないのー?
[自身の上司、しかも魔王をその名で呼ぶのは世界広しとあまりいないだろう。だがそろそろ退屈極まる男にはそんなことなど関係なく恐れ戦く他のものの視線と囁きを諸共せず砦を闊歩する。
どうやら夜間に攻撃をしかけるらしい。これはついて行く他あるまいと顔には出さないが、心を弾ませていた。]